目を擦って、顔を上げた俺の視界の中に楠木さんはいなかった。 「くすき、さんっ…?」 「……大丈夫だよ」 俺の声と、応えた楠木さんの声が重なる。 楠木さんが電気を消したんだと気付くのに、少しだけ時間がかかった。 「困らせてしまったね、坂口君…見なくてもいいよ」