だからと言って《ライズ》は仲が良すぎる、とは他人の弁。 「…さくらー」 俺に返事を返すのは優しいベースラインだけで。さりげなくドアノブに手をかければ、鍵は訳もなくすんなりとはずれた。 ………無用心だなあ 思いながら、ベースに導かれるまま足を動かす。廊下の中腹でギシッとしなる床板。 それで気付いたみたいだ。 「……ゆき?」 さっぱりとした、でも味のある…フルーツに例えればグレープフルーツ、そんな声質が俺の耳をくすぐる。