「どんだけ気ィ抜いてても、怒ってたり泣いたりしてても…!」 言いながら、また涙がぽろんと落ちた。 だけど、もう迷わなかった。 「楠木さんの、ぜんぶをっ…!」 視界が滲む。 漆黒の闇のベールに包まれた、優しい黒だけが見えてくる。 「全部を肯定するのは、俺じゃ…俺じゃ、駄目ッスか!?」 言い切った俺はぎゅうっと楠木さんの手を握ったまま、離さなかった。離せなかった。 楠木さんが、するりと何処かへ行ってしまいそうで… 何より、もう二度と独りきりにしたくなかったから――。