拓海はいつもラブソングばかり歌う

それも いつもアタシの顔を見て


だけどアタシは目を合わさない 携帯いじったり歌詞本を見たりして 絶対拓海の歌ってる顔を見ない



普通なら顔を見て 照れたりするんだろけど

アタシ達…アタシは普通じゃないから


だけど 拓海はそんなアタシに何も言わない

アタシみたいに つまらない女といて何が楽しいのか いつも不思議に思う



「何か飲む?」


歌い終えた拓海が また煙草に火を点けアタシに聞く

ここに来てまだ10分も経たないというのに 3本目だ


「アイスココアが飲みたい」

メニューに無いのを知っててアタシは言う

メニューを見て アイスココアがないのに気付く拓海

「外の自販機見てくるよ」


あるわけが無いこんな季節に… だって冬なんだから
ホットココアはあっても アイスはなかなか無いのに

アタシだってそれぐらい分かってる

拓海だって 分かってるハズだ…


こんなにワガママ言っても 何も言わない

「もう…いいよ」

「だけど…アイスココア飲みたいんだろ?」

「もういいってば…」

「じゃあ ほかには?」

「…コーヒー」


拓海は 煙草を吸いながらアタシのコーヒーだけ注文した