昨日まで借りていたアパートを引き払い、要らない家具は後輩に買ってもらったりして総て処分してしまった。
私に今あるのはこの両手のみの荷物。
実家には一応連絡は入れておいたけど、上京する前から家族関係は駄目になっていた。
決して大きくは無いが地元では地域密着の病院として名高かった。
両親もその親達も、兄姉も病院を支えるべく医者となり、当然こんな医者家系に生まれた私も医者になる予定だった。
だが、小さい頃から血への恐怖症が強く、結局克服できないまま医大へと受験する振りをして、一人遊びの上手だった私は幼い頃一人絵を書いて過ごす時間が多かったこともあり、絵への興味を捨てきられず美大を受験していた。