薄暗い月明りの中、花の蜜を求める虫のように知らず知らずと引き寄せられ、同じように引き寄せられた青山君の肩とぶつかるのさえ気にならずその絵を魅入っていた。

「すごい」

埃を被り、陽に焼け、随分と長い間飾られてきただろう年月を重ねた汚れと変色さえ物ともせず、まるで今活けられたと言うような瑞々しさと咽返る様な香りを運んできそうな絵に呼吸さえ忘れそうになってしまう。
どれだけ見ていたか判らないけど、いつの間にか明かりがついていて、見上げれば豪奢なシャンデリアは予想通りキラキラと美しかったが、背後ではしゃぐ茜ちゃんのように不思議と感動は出来なかった。