*王子さまの甘い誘惑*




その時。


シルバーネックレスの

ダイヤの裏に

刻まれたローマ字が

目に入った。



S…A…?


SAって何だろ。



なんて、この時は

深く考えなかった。

周りが騒いでいる

その意味も。




「あれ?それ、
陸のじゃん。
何で天宮ちゃんが
持ってんの」



安堂直が、

あたしの手にある

ネックレスを見ていった。



「桜井くん、これ、
さっき落としていったから
あたし…」


「ほんとだ、無くなってる」



桜井陸は

自分の首もとに無いはずの

ネックレスを

探した後、

そう言った。



「はいっ」



よかったぁ。

やっぱり

桜井陸のネックレスだ。


そう思って手渡した。



「ありがと」



…わ。

また、そんな顔して

笑うから。


女子が騒ぐのも

むりないや。




お金持ちの息子でも、

こういう人って

いるんだなぁ。


っておもうと、

ちょっぴり

嬉しいような。




そして、

その時には

周りの女子の視線なんて

全然気にしてなかったんだ。




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