*王子さまの甘い誘惑*




あたしが

固まっていると、

桜井陸はまた

クスリと笑った。


…あ。


桜井陸の

ちょっとした優しさに

やっと気がついた。



「ありがと…」



あたしも

右手を差し出して、


彼があたしを

立ち上がらせてくれる。



「天宮さんみたいな女子、
初めて見るタイプ


「え…
どういうこと?」


「んー。
そんな気がするだけ。
ほかの女子と
だいぶ違うよね」



「あはは、何それ」



この人にむかって

初めて笑った。

ちょっとした緊張も

すぐにゆるんでしまう。



「なるほど」



また

意味深な言葉。



「天宮さん、
男子生徒に
気をつけた方がいいよ」


「はい?」



「あと、
うるさい女子にも」


あたしの頭に

ハテナが浮かぶ。


そんなあたしをよそに、

桜井陸は手を振って

校舎へ帰って行く。



「あ、え、ちょっと待って…」



意味もよく

分からないまま

取り残されたあたし。



「もー」



ため息をついて

ふと

下を見ると、



「あ!」



ダイヤのついた

ネックレスが落ちてる。

しかも、男もの。



桜井陸の落とし物!?



急いで彼を

追いかけようとしたけど

もうそこには

だれもいなかった。






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