そのままゆっくり、優しく抱き締められる。
そして、顔を覗きこまれた。
「しゃ、社長?」
そんな真剣な目で見つめられるとあたし……。
だけど今日は、とことん期待を裏切られる日らしい。
「マスカラ落ちてる」
そう、マスカラね。
「……マスカラ!?」
「その顔じゃあ、相手の男ドン引きだな」
「んなッ‼」
仮にも妻が他の男とデートするのを阻止しようと思わないのか、この男は‼
「じゃあな。お疲れ様」
それなのに社長は、さっさとあたしに背を向けた。
何よ。
その気にさせるだけさせて。
……もういい。
他の男とデートしまくってやるから‼
当てつけみたいに勢いよく社長室のドアを閉めた。
「バカ……。後で後悔したって知らないんだから……」

