旦那様は社長


「そうはいかねぇ。オレは有栖川グループの全てを手に入れたい。他の誰かに渡してたまるか!!」


一瞬ドキッとした。

真剣な眼差しで、瞳の奥深くには何か秘めたるものが見え隠れしていたから。


もちろん、だからってこの結婚を承諾はできないけれど。


「あたしまで巻き込むつもり!?」


「お前にとっても悪い話じゃないと思うけど」


「生憎あたしはお金や権力には興味ないの。もう、早く離してよ!」


掴まれた手を勢いよく振り払った。


「ふーん。でも、お前の秘密をバラまくって言ったら……今の考えも変わると思うけど?」


「何よ、あたしの秘密って。そんな脅し、怖くもなんともないんだから」


「お前の男関係を洗いざらい吐き出そうか?あ、なんなら全社員にメールしてもいいが?」


「……男関係?」


身に覚えがたくさんあるだけに、頭が真っ白になった。