あたしたちが会場に戻ったと同時に事件は起きた。
「続きまして、有栖川グループの会長であり新郎の祖父でもあります、有栖川悠星様よりお言葉を頂戴したいと思います」
あたしと社長は気を引き締め少し姿勢を整えた。
「皆さん。今日は我が愛孫息子と新しく有栖川一族に仲間入りをする光姫さんのために、お集まり頂きありがとうございます」
出だしは普通の挨拶だったのに、どんどん式とは関係ない方向へ話が進んでいく。
「えー、この場を借りて皆さんにご報告があります」
あたしと社長は顔を見合わせた。
「私はそろそろ引退を考えています」
「「えッ!?」」
そんな話はまったく聞いていなかった。
社長もとても驚いているところを見ると、知らされていなかったんだろう。
「悠河もこうして結婚したことですし、来年あたり、有栖川グループ総帥の座を譲ろうと考えています」
「ウソ!!」
とうとう社長が、有栖川グループのトップの座に!?