小さなトランクに、あたしは荷物を詰め込んだ。
でも全ては持っていかない。
大河くんが社長と何の関係もない子供だと証明されたら、またここに戻ってこよう。
今度こそ素直に社長の胸に飛び込んで。
そして一晩中抱きしめてもらおう。
最後に社長の寝室をグルッと見渡すと、広い部屋の中央に置かれたベッドで視線が止まる。
目を閉じれば思い出す。
あまりたくさんの夜は過ごせなかったけれど、いつも幸せな安らぎの時間だった。
いつもあたしを力強く抱きしめてくれる、逞ましい腕。
一生のお別れじゃないと分かっているのに、次々と涙がこみ上げてくる。
社長の側で眠ることに慣れてしまったあたしは、1人で過ごしていた時のことを、もう思い出せない。
あたし、ちゃんと離れられるのかな……。

