目の前に差し出されたのはピンク色の小さな箱。


「これ?」

「開けてみろよ」


言われるがまま、ゆっくりとそのリボンを解いて、箱を開けた。


「……ッ、これ……」

「貸して」


社長が箱から取り出したモノ。


「マリッジリング」


堪えきれずに涙が溢れ出した。

だけどこれは、さっきとは違う涙。

悲しい涙じゃない。


「どうして?」

「オレたち、あんな形で突然結婚したから。式も指輪も、何もなかったろ?」

「……うん」


今考えても、普通の形じゃない。