旦那様は社長


「あッ、あの車ですか?」

「え?」


急いで窓越しに車を確かめると、見覚えのある黒のメルセデス。


「あれです‼お願いします‼」


運転手さんが帽子を被り直して、イキイキとして言う。


「しっかり掴まっていて下さいよ。見失わないようにしますから」


「えッ、は……い……」


バックミラー越しに見えた運転手さんは何だかとても楽しそうな顔をしていた。


「もしかして、刑事ドラマとかお好きだったりしますか?」


あたしの問いかけに運転手さんは満面の笑みで答える。


「密かに」


「……なるほど」


なかなかノリのよい運転手さんに巡り会ったようだ。