旦那様は社長


「会長、その女性は美夜子ではありませんよ」


社長が溜め息をはきながら、ゆっくり会長へ近づく。


「さぁ、会長。彼女も困っています。放してあげて下さい」


「……」


会長は黙り込んだままだった。


「あの、会長?」


あたしはそんな会長の顔を恐る恐る覗き込む。


「分かっておる」


か細い声と共に会長がゆっくりあたしの身体を放し、視線を合わせた。


「美夜子はもう死んだ。……ここにはいない」