旦那様は社長


もしも遠山さんのように、あたしを愛してくれる人と結婚したら、心から幸せになれる?


その答えは誰も教えてくれない。

きっと、誰もその答えを出せない。


人は幸せに慣れてしまう生き物だから。

幸せがいずれ“当たり前”になる。

そして、……足りなくなる。


「結婚って……何のためにするんだろう」

「え?」

「……なーんてね」


笑って誤魔化している場合じゃない。


あたしはどの道、遠山さんの望みを叶えてはあげられないんだから。


「ごめんね。あたし、結婚はできない」


社長があたしを妻と思っているかは謎だけど、あたしはもう有栖川の人間だから。


「オレじゃ……ダメ?」

「ううん、遠山さんが悪いとかじゃないの!ただあたし、結婚にトラウマがあって……」


フォローを入れた後に失態に気づく。


「トラウマ?」


二度と思い出したくない過去が……蘇る。