「……なにその言い訳。ふるなら、もっと上手にふってよ」
リカちゃんは口を尖らせてスネてしまった。
「あはは。ほんまやな。オレ言い訳下手くそやな」
やがてタクシーが止まり、オレは榊町付近までいけそうなぐらいの金を運転手に払う。
「送ってあげれんくて、ごめんな」
リカちゃんはまだご機嫌斜めだ。
「そんな優しいこと言うからダメなのよ。色々期待しちゃうじゃん」
ってブツブツ言ってる。
そしてタクシーから降りようとするオレのジャケットをまた掴む。
「メアドも教えてくれないの?」
「リカちゃん。オレなんかやめといた方がええで」
「どうして?」
「オレ、あんまいいヤツちゃうで。結構な腹黒やから」
「腹黒?」
「そう。胸ん中に、薄汚れたもん色々抱えてるから」
「イッペー君てずるい。そんなこと言われたら、余計に興味わくじゃん」
リカちゃんは納得のいかない顔をして、またブツブツ言っていた。
「ほな、またね」
去っていくタクシーを見送りながら、伸びをする。
明日から新学期が始まる。
さて……と帰るか。


