「タクろか?」
店を出て、横にいるリカちゃんにたずねた。
指定された店は、わりと不便なところにある。
徒歩だとかなり時間がかかりそうだ。
かといって電車を使うとかえって遠回りになる。
オレはタクシーを止めて、リカちゃんとふたりして乗り込んだ。
「えーと……」
運転手に行き先を告げようとしたそのとき、リカちゃんが身を乗り出す。
「榊町の方に行ってもらえます?」
店とは違う方向の地名を彼女は告げた。
「え?」
驚くオレ。
リカちゃんはオレの腕に自分の腕を絡ませてくる。
「うちで飲みなおそうよ。ふたりで」
そういって、オレの肩に頭を乗せる。
彼女の髪から甘い香りがする。
てか、おっぱい!
思いっきり腕にあたってるんですけど。
ミラー越しに、一瞬運転手と目が合うと、意味深な顔で微笑まれてしまった。
おっさん、ニヤニヤすんな。
ともかく、オレらを乗せたタクシーは走りだした。


