「あのね…あたし、幽霊じゃなかったの」








「…は?」






「幽霊じゃなかった」







「…じゃあお化け?」








「んな訳ないでしょ?生きてたの!」







美緒はニコニコしながら言う。







…また冗談言ってんのかよ。










呆れた顔をした俺を見て、美緒はさらに話を続けた。






「あたし、生きてたの。
翔に抱き締められながら成仏したと思った後、気が付いたら病院のベッドの上だった。
その病院はね、前、真山先生が知り合いがいるって言っていた翔の病院の近くの大学病院」










俺は黙って頷く。







「あたし、自分が翔の病院にいた日に事故にあってたの。
両親と乗っていた車が事故にあって、翔とさよならした日までずっと意識不明だったんだって。
だから調べてもあたしの身元が分かるわけないよね。

みんなあたしが死んだものだと思って調べてたんだもんね?」









…俺も、真山先生も亡くなった人の中から美緒の身元を探していた。







生きていたなら、探しても見つかるはずが無かったんだ。









「意識不明だった…って事は、俺といた間、幽体…離脱…していたって事か?」









「そう!だから微妙な幽霊だったんだよね。
で、目が覚めたら全部思い出しちゃった!
自分の名前…今までの事…翔と一緒にいた時の事もちゃんと覚えてたの」