「おい!しっかりしろ!」
俺はしゃがんでその子の肩を揺すった。
「ん…?」
ようやくその子はゆっくりと顔を上げる。
そして、
俺の顔を見ると、さっきと変わらない笑顔で
「寝てた〜」
と呑気に言った。
…はぁ。
寝てたじゃねーよ!
てっきり具合が悪いかと思って一瞬ドキっとしたし。
「眠たいなら家に帰れよ」
「…家、分かんないもん」
さっきとはガラリと変わり、寂しそうな顔で俺を見る。
「分かんないって?」
いくら何でも自分の家くらい分かるだろ。
記憶喪失とか?
「…あたし死んでるの!気付いたらここに居たの!」
…またそれか。
いきなり守護霊だって言ったり、今度は死んでるって言ったり…。
「冗談言うなって」
俺は呆れた顔でそいつを見る。
しつこいやつだな。
俺は黙ってロッカー室に入り、白衣を脱いでロッカーのハンガーにかけると鞄を持ってまた出た。



