すぐ横で引っ張られたんだから、
俺だって誰が引っ張ったかくらい分かったはずなのに。
なのに俺は誰だか分からなかった…
一体どうなってるんだ?
腕にはまだ掴まれた感触が残ってる…
とにかく、頭にボールが当たらなくて本当に良かった。
あのボールをまともに受けていたらきっと大変な事になっていただろう…
病院で、しかも医者が遊んでいて怪我するなんて事にならなくて良かった。
中庭から院内に入り階段を上る。
俺はエレベーターを使わない。
なんか緊急があったときに万が一エレベーターが止まったら困るから。
本当に何だったんだろう…?
感覚の残った腕を触りながら上っていたその時。
『さっきは危なかったね』
背後からそんな声がして、俺はふと後ろを見た。
俺より2、3段下に立っている女の子。



