今日はバイトはないが、しかしあまり家に帰るのが遅くなると愛しい妹に心配をかけてしまう。どちらかと言うと、人探し(こんなこと)などさっさと切り上げて家に帰りたかった。

「アズラクは今どうしてっかな。ちょっと電話してみっか」

 と思い、ポケットから携帯を取り出そうとして、

 コーン……

 何かがポケットから落ちた。
 愛用の金の懐中時計だ。

「あ、チェーン付け忘れてた」

 と、呟きながらそれを拾おうと腰を下げると、視界の隅で何かが動いた。