呆然として目の前に現れた者の姿を凝視するムメに、一言主はそっと歩み寄る。そして、ムメの顎を手でクイッと上向かせると、耳元に唇を寄せた。


「…どうした?」


問う声に返ってきたのは、

ムメがその場に崩れ落ちる、ドサッという音だった。


「あぁ!ムメさん…!
―――何だって貴方はこういう事をするんですか!
しかも、そんな格好で出て来られたら、誰だってビックリしますよ!」


倒れたムメを抱き起こしつつ苦情を言うヒョウリに、一言主は面倒そうな視線を投げた。


「五月蠅い。突如私を呼び付けておいて、何だ。その言い様は。
わざわざお前の汚い部屋に来てやっただけでも、有難いと思え。」


「…知ってます?人間は、貴方みたいな人を“二重人格”って呼ぶんですよ」