(…おかしい。“目”はずっと後ろを見ていたはずなのに…。)


立ち止まりはしたものの、予想外の現実に戸惑い、言葉が出ない。

すると、女性は怪訝そうな顔になり、溜め息をついた。


「何があっても、言葉は紡がないと…。そんな調子じゃ、秒殺されるわよ?危なっかしいコねぇ。」


「何者ですか。」


さすがに、ただ者ではないのは明らかだ。

特に、ヒョウリにはそれが良く分かった。

―――彼女は、言葉を発しているにもかかわらず、周りに何も“いない”。


つまり、言霊を一つも生み出していなかったから。