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「…いつかの、あのばしょで…」


「あぁ、そうだ。
恐らく、そこへ私をおびき出そうとしていただろうからな。手間を掛けるのは悪いだろう?」


勇次を捜しに来た言霊に術をかけヒョウリの元へ戻したのは、勿論、慎だった。
その伝言を見た慎の式神、蝶が感情の欠けた声でそれを読めば、やはり平仮名だけの言霊が空へ上っていく。


「では、行くか。
だが、困ったな。あの娘は違う場所にいるのだろう…?

ならば仕方ない。そちらの始末は、“アレ”に任せるとしようか…」


「しんさまッ…かつらぎから、つかいが…」


思惑を言葉にして整理していた慎は、蝶のその言葉にハッと顔を上げた。戸を開けさせると、庭の中空に直衣を正しく来た老人が立っていた。その足元には、神がよく乗る彩雲。


『葛城から来た。神の意向を伝えよう』