まてまてまてまて。こいつの烏龍茶は左側にあったはずだ。今飲んだのは…右側…だ、
嫌な予感がする、と目を泳がせていると慧と目があった。
今コイツが飲み干したのはウィスキーだ。
しかも俺の飲みかけ…。
かっ間接きっ…いや、いかんいかん。
それより九鬼島は大丈夫なのか?
「なんか変な味がしますねこの烏龍茶。」
九鬼島はさも何事もなかったかのようにけろっとしている。
酒に強い体質なのか?
だが…ウィスキーだぞ?
「大丈夫か?九鬼島」
「なにがでしょう…」
「なにがって…お前っ酒」
「えっ…お酒なんか出したんですか。まあ私両親が強いんで心配ないと…思います、」
「お前が勝手に飲んだんだよっ!」
念のため、慧に確かめてもらったが本当に大丈夫なようだった。
が、しばらくして九鬼島がそわそわし始めたのだ。
「ぅぁ…暑いですね、…っはぁ…」
ぷちっ
ぷちっ
九鬼島は着ていたブラウスのボタンを第二ボタンまで開けてばさばさと悩ましげな表情で、空気を取り込む。
頬は若干色づき、じんわりと汗が滲んでいた。
酔っているにしてはあまりにもいつもと変わらない。だが様子がおかしいのは確かだ。
「お前…本当大丈夫か。酔っているんじゃ…」
慧が心配して九鬼島のぺたりと張り付く前髪を払いのけ額に手をやったその時だ。
「ぅぁっ……せんせっ…きもちっ…」
ブフッッΣ
「ごほっごほっ…はぁっ、
九鬼島?!」
なっなんてこと言うんだコイツはっ
俺は飲んでいたウィスキーを盛大に吹き出した。
「霧島先生の手、冷たくて…気持ち…です。」
とろんとし始めた目を細め、微笑を浮かべる九鬼島は、慧の片手をとり、絡めるようにして握って、手を繋いだまま、自由な方の手でそのままゆっくりと慧の身体を後へ押し倒した。
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