てとてとてと

「ちょっと失礼」



 など、と不意をついて筆入れを奪った。

 怒るように制止されたが、気にしない。


 やけに堅く締まったファスナーを下げ、中身を見た。



 そして、見なければよかったと後悔した。



 かつて、シャープペンだった物を取り出した。
 無残に真っ二つに折れ、筆の役割は果たせそうにない。


 消しゴムのような物を手に取った。
 刃物で切り刻まれ、まるで味噌汁の豆腐状態だ。



 定規も、他のペンも、どれもこれも壊されていた。
 よく見れば、筆入れには何度も叩きつけたような、足跡がついていた。


 これで故意でないとしたら、一体なんだ。



「返しなさいよっ!」



 押し殺した声と共に、久坂の手が伸びて、奪い返された。


 苛立ちを隠し切れず、小さく頭を掻く。まったく、朝から気分の悪いことだらけだ。



「それ、どうしたんだ?」



 どうもこうも、一目瞭然だ。
 しかし、それでも聞かなくてはならない。


 本人が認めなければ、そうだと決め付けられないから。



 久坂は、同じように頭を掻いた。


 苛立ち、怒り。
 少しの悲しみと、諦め。
 そんな様々な重いが混ざり合った、複雑な表情をしていた。



「別に……」



 やがて、久坂はそう言った。



「いつものことでしょ?」



 強がりでもなんでもない、
 本心で、そう言っていた。



「…………本気か」



 思わず、そう聞き返していた。
 今朝からため込んできた欝憤が、少しだけ声に乗り、語気が荒かった。


 それでも、聞かずにはいられない。


 こんなことが、いつものこと。


 そんな馬鹿げたことが、あるはずがない。



 そう否定しようとして、久坂に睨み付けられた。


 叱るような、咎めるような、
 じとっとした半眼で。



「それをアンタが言う?」



 急に、頭が冷えた。


 彼女の一言は、勝手に怒っていた自分に、冷や水を叩きつけたのだ。