てとてとてと

 生乾きの上履きのまま、教室に駆け込んだ。

 というのも、後ろから凄まじい勢いで茉莉が追い掛けてきたからだ。

 言わずもがな。
 ゴミ山の件である。


 どうにも、ゴミ出しの最中に小耳に挟んだらしい。

 やはり、人の口に戸は立てられないようだ。


 すると当然のことながら、茉莉は怒った。

 事情を話せと迫ってきたので、校内一週を使った追い駆けっこで、煙に撒いた。


 おかげで遅刻ぎりぎりだ。


 駆け込むなり、予鈴のチャイムが鳴った。


 茉莉は、駆け出そうとした不恰好な姿勢で、固まっていた。



「やれやれ。朝っぱらから大変だ」



 軽口を叩きながら、隣の席に座る久坂に、挨拶した。

 当然、返事はない。



「それにしても、今朝はやけに静かだな。テストが近いからか?」



 返事がなくとも、変わらず独り言のように、話し続けた。


 そうする以外、考えが浮かばなかった。



「…………あんたは」



 しかし、予想外にも返事があった。


 だが、無駄話は止めない。


 何も気を引きたくて、話しかけたわけではないのだ。



「――だしな。ん? どうした」


「…………」


「ああ、煩かったか?」


「……あんたは、能天気よね」



 呆れたように、疲れたように、久坂はそう言った。

「きっと、頭の中も晴れなんでしょうね」


 能天気か。確かにそうだ。


 でも、頭の中くらい、晴れやかでいたい。


 どんより曇り、雨が降り出すのは、現実だけでいいのだ。



「うん。でも天気は悪そうだぞ」



 そう言って、外を指差した。

 予報ではしばらく雨続きらしい。



「今度は傘を忘れないようにしないとな」


「――――あんた」



 なぜか、きつい視線で睨まれた。
 何かしただろうか。


 しかし、尋ねる前に目線を逸らされてしまった。



「あたしに、話し掛けないで」



 そうして、会話を断ち切られてしまった。

 また一段と、壁は高かった。