てとてとてと

 朝から、茉莉は不機嫌だった。
 付け加えるなら、千草もだ。


 その原因の一端は、やはり俺にある。

 お祓いでもしてもらうべきか。



「人災ならば意味がないな」


「頻度が落ちるとか。ないか」


「お前、今年の初詣で何を願った?」


「特になかったんで、思わず成仏してくださいと」


「この罰当たりめ」



 なるほど。人災に加えて天罰か。


 それなら仕方ないと、弘瀬と一緒に笑い合った。



 苛立ちを隠そうともしない茉莉は、そのやり取りに火山を噴火させた。



「なんでそんな笑ってるの!?」



 噛み付かんばかりの勢いで吠えた。


 さすがに、食事後に噛み付くほど、非常識ではなかった。

 それだけで十分だと思うだろうが、癖なら仕方ない。



 ちなみに、今は昼休みだ。



 朝の出来事は密やかに浸透し、二人の耳に入っていた。


 大々的に話になっていないのは、証拠がないからだ。


 勝手な目撃証言や、
 尾ビレをつけた虚言や、
 適当な噂話だ。


 もっとも、その中心にちらちらと自分の影が見えているので、どんな話も信憑性が高くなる。



 そして、先ほど弘瀬が暴露した。

 朝の出来事を。

 それはもう、包み隠さず。



「もう隠すが意味がないだろう。
 なら、大人しく話して協力してもらえ」



 確かに、その通りだとは思うが。

 頼むから、巻き込む側の心情も察してほしい。



「なら、お前は自ら首を突っ込まない自信と保身があるのか?」


「…………ないなあ」


「よし。諦めろ」



 似た者同士というか。

 見事に、鉄砲玉ばかり集まってしまったわけだ。



「わかったわかった。
 この件については、あとで相談するよ」


「今じゃないのっ?」



 茉莉さん。血の気が多いです。



「まあ、事情がありまして」



 なにせ、問題は俺だけではないのだ。


 ゴミだらけにされた、自分の靴箱。


 その隣の人物に、話を聞かねば。