てとてとてと

「おはよう、こーすけ!」


「ああ。おはよう茉莉。
 今朝も元気だな」



 家を出ようとしたところで、茉莉が待ち構えていた。


 和やかな挨拶だったが、実は腰が引けている。



「私が何言いたいか、わかるよねえ?」


「…………おおよそは」



 茉莉は、仲間外れを嫌う。

 悪事だったら制止役として、
 楽しいことなら一緒に騒いで、
 中核というわけではないが、基本的に離れたがらない。


 事情は察しているが、時と場合である。



「それじゃあ、説明してもらいましょうか」



 にひひ、と笑う。

 天真爛漫な笑みだ。
 白い犬歯が眩しいぜ。


 そんな顔をされては、答えねばなるまい。


 カバンからある物を取り出し、茉莉に握らせる。



「? なにこれ…?」


「きろりーめいと」


 彼の栄養食品のパチモノである。



「……カルシウム味?」


「すまない。骨っこはないんだ」



 茉莉は封を開け、一つ口にした。


 ちなみに、牛乳五百ミリと同じ分だけ摂取できる。


「これで足りないカルシウムもばっちりだ!」


「そうだね!」



 笑顔だった。



「……死にたい?」



 裏には般若がいた。

 やはり制裁からは、逃れられなかった。


 地雷を踏み抜いた気もするが、気のせいだと信じたい。



「――ガブッ!!」


「――アッ――――!!」



 朝っぱらから、美しくない悲鳴が上がった。


 しかし、この程度ですむなら、安いものだ。



 親しい間柄では周知の事実で、茉莉はケンカっぱやい。


 血の気が多いのか、口より先に手が出ることなどしばしば。



 俺たちは無言の協定として、
 そんな事態に彼女を巻き込まないように決めている。



 痛みなんて共有しなくていい。



 楽しいことを分け合って、
 悲しいことは独りで抱えて、
 それで笑えれば、それでいい。



 結局、昨日の件は、放課後付き合うことで許してもらった。