てとてとてと

 五分後――――
 立っているのは、あたしを含めて二人。


 当然、割り込んできた槇原だ。



 本来なら、お礼を言うべきなのだが。



「手応えのない奴らだったなっ」



 にこやかに振り返った。

 その面に、クロスカウンターをたたき込んだ。



 頬を抑えて蹲る。

 あまり効いていないだろうが、それより問わなければいけないことがある。



「何であんたがここにいる?」


「な、なんでって……?」


「こんな場所に、誰が好き好んで足を運ぶのよ」



 校舎裏なんて、部活動でも掃除でも使っていなかった。

 そんな荒れ放題な場所に、立ち入るはずがない。


 あたしのように、呼び出されないかぎり。


「……」

「……」

「…………道に、迷いました」



 真面目に答える気は、ないようだ。


 本当に、人をおちょくることにかけては、天才的な奴らである。


 感謝の気持ちなんて、
 一周して怒りに変わるほどだ。


 あたしは、槇原に背を向けて、空から降ってきた空き缶を手に取った。


「空き缶拾ってどうする気だ?」


「スチールはさすがに痛いわよね。アルミはないかしら」


「痛いって誰が?」


「全部缶コーヒーじゃない。
 仕方ない。これでいいか」


「何で振りかぶる?
 待て、待て待て。それはボールじゃねえ!」


「千本キャッチよ! 死ぬ気で取りなさい!」


「あたたたたた!!」



 何度も降ってきた缶を、力一杯投げ付けた。



 放り投げるたびに、
 ある男子生徒の顔が、浮かぶ。


 何の悪気もないんだと、
 ぼんやりと、飄々とした顔。


 それが、とても腹立たしい。


 得体の知れない苛々は、
 八つ当たるしか解消方法を知らなかった。



「なんで笑ってんだ?」



「煩い! 星になれ!」



 そうして、はしゃいでいられたのは、今日限りだった。



 翌日から――

 あたしの環境は、一変した。