てとてとてと

「二枚チェンジ。それで、最近田沢が付きまとっているのか」


 田沢って誰だったか、顔の出てこない誰かを思い出そうとした。

 どこかで聞き覚えがある。

 山札からカードを一枚引いてもらい、手札を伏せた。


「うん。あまり評判はよくないよ、横暴なんだって。一枚替えて」


 茉莉が嫌そうな顔をするなんて、相当なことだ。

 滅多に人の悪口は言わないのに。

 まあ、親衛隊に対しては別口だが。
 直接対決は見たことがないが、本人曰く犬猿の仲だそうだ。


「田沢も過激な否定派だからな。チェンジなしだ」


 なるほど滅多に相当したようだ。

 茉莉は自分のことになると、やけに怒りやすい。

 過激派というのは、親衛隊の真似事をしてからんでくる、お調子者たちのことだ。


「全部替えるぜ。けど、そいつがからんだからどうなるんだ?」

「からむだけなら良かったんだがな。オープン」


 弘瀬が言い淀むとは、また珍しい。

 つまり、大きな面倒事になると言うわけか。


「やった、フルハウス!」

「むぅ。フラッシュだ」

「げ、俺ブタだ!!」


 次々手札を開けていく。
 順位は茉莉がトップだ。

 自分のカードを開けようとして、ふと気付いた。


「ああ、思い出した。
 少し前に千草がぼこぼこにした奴だ」

「え? そんなことしたっけ」


 二月ほど前だ。

 三人組に囲まれていた千草に助っ人して、その時殴り倒されたのが田沢だ。


「それは兄の方だ。この学校で千草に喧嘩を売る猛者はお前しかいない」


 ひどい言われようだ。

 田沢の兄となると、年齢的には一つ上になる。
 あのへっぴり腰で年上かあ。


「なら問題ないだろ」


 同じことを思ったのか、千草は不敵に笑った。