朝から彩音と茉莉、予定外にも千草と弘瀬を加えた大所帯で学校へと向かう。

 ちなみにキックボードは校則で禁止にされていないから、という理由で乗り続けている。

 絶対没収されそうだが、弘瀬なら押し通すだろう。

 汗だくになった千草は上着を脱ぎ、まだ寒い季節だというのにTシャツ一枚になっている。
 見ているこっちが寒々しい。

 そんな破天荒な二人に、グチグチとお説教する茉莉。

 家族構成で長女のためか、基本的に世話焼きで、だらしがない相手には容赦がない。

 少し先を歩く三人を、彩音は楽しそうに見ていた。


「かわらないね」

「いつも通りだよ」


 付き合いの長さはそれぞれだが、少なくとも全員と一年以上一緒にいた、苦楽をともにした仲だ。

 本当は、あと一人いる。

 その人物は通学路が同じなのだが、ともに登校することはあまりない。
 別に仲違いしているわけではなく。


『遅刻だ遅刻だ〜!』


 はて。そんな時間ではない。
 十分安全圏だ。

 みんな同じ考えらしく、揃って腕時計で確認していた。

 坂の下から駆け上がってくる金色の髪。
 男子五十メートル走平均の速度に匹敵する速さで駆け上がってくる、女子。
 真剣な表情は、進路の先にいる俺たちに気付いていない。

 そんな彼女は俺たちの友達だ。

 ――やるか。
 ――よっしゃ。
 ――おいおい。

 獲物を取り出し道の左右に広がる千草と弘瀬。

 坂の中腹から、一気に駆け上がろうと加速する女子。
 タイミングを合わせて。


「せーのっ……いくぜ!」

「よっしゃああ!!」


 ビンッと張られる縄跳びの縄。
 走りに夢中で気付かずひっかかる。

 バランスを崩した女子は忙しなく瞬きしていた。


「こんのおっ!!」


 不様に転倒すまいと両腕を突き出す。

 掌を擦り剥きそうな勢いだったが、あろうことか着いた手で地面を突き飛ばした。

 小さく跳ねる体。
 ぐるんと一回転して尻から落ちていく。

 あんな咄嗟に受け身をとろうとするなんて、ちょっと真似できない。