てとてとてと

 親衛隊は屈強で狂暴で、
 目的のためなら(特に吾妻幸介の場合)手段を問わない。

 邪魔をしたり、下手な庇い立てや馴れ合いは、火の粉を浴びたではすまない火傷を負うと、学校中が知っていた。


 あんな風になりたくないよな。


 誰かがそう呟いた。

 シンと静まり返った教室の中で、
 みんなの心根は共有されていた。


 やがて、時間もかからず元の空気を取り戻す。


 何事もなかったかのように、日常が帰ってきた。

 目を瞑る、そんな簡単なことに逃げ込んだのだ。

 あの立場に回されることを、怖れているから。


 だから吾妻を嫌う、
 自分の身が可愛いから。

 だから吾妻を嫌う、
 同じ目に遭いたくないから。

 だから吾妻を嫌う、
 彼が嫌われ者だから。

 長い者にまかれる、事なかれ主義。

 それが学校の中で、平和に過ごす術なのだと知った。


「久坂も、席が隣だからってあんまり付き合わないほうがいいぜ?」


 田沢は吐き捨てるように言った。

 はぐれ者を嫌う典型的な態度で忠告すると、すぐに別の話題で盛り上がった。



 そんな彼の言葉に、何も言い返せなかった。

 はぐれ者にされる痛みは、
 いやというほど知っている。

 ただでさえ目立つ特徴は、
 わけもなく中傷されやすかったから。

 あの痛みは慣れるものじゃない。

 あの痛みは忘れられるものじゃない。

 火傷するとわかっていれば、火に触れたりはしない。

 この日から、あたしは吾妻幸介を避けはじめた。