てとてとてと

「生活態度が悪いって先生に注意されるのが面倒臭くて、勉強は真面目にやるよ」


 今は疲労回復が優先、そう言って欠伸を噛み潰した。

 いま、聞き逃せない言葉があった。

 機会はここしかない、
 そう思って藪を突いた。


「先生に注意って、そんなに悪いことをしてるの?」


 居眠りや遅刻で注意されるくらいなら、成績で評価を稼ぐ必要はない。

 つまり、良い成績でないと、先生に目を付けられる何かがあるんだ。

 ああ、と曖昧に言葉を濁す。
 失敗したな、と顔に出ていた。


「黙秘権を行使してもいい?」

「この時間も廊下に立ちたい?」


 互いに声を潜めて笑うと、やがて相手が折れた。


「つまらないことだぞ?」

「面白いつまらないは、あたしが決めるの」

「たいそうな自信ですね。猫の皮必要ないでしょう」


 余計なお世話だ、そう怒りかけて声がよく聞こえなかった。

 あたしの問い掛けに、答えてくれたのに。


「吾妻、眠いのか」


 気付いたら、先生が目の前にいた。

 いつの間にか顔を伏せていた、問題児の前に。


「灰色の脳細胞が変色しそうです」


 どんな言い訳だ。


「うむ。どんな気分だ」


 話を続けるのかっ。


「水に漬けたネンドを食べている気分です」


 想像しただけで気持ち悪くなってきた。


「興味深い、保健室に行くか?」

「ああ、左脳がうずくっ」


 わざとらしい足取りで教室を出ていく。

 先生は手帳を取り出し。

 減点一。
 ちゃっかり点引きをしていた。