てとてとてと

「優勝していたら、きっともっと大人気だったな」

「人気はともかく、優勝を逃したのは惜しかったわね」


 準優勝だったあたしたちには、当然補習免除の特急券は手に入らなかった。

 クラス総合も二位で、ありえないことだが、赤点を取ってしまうと補習が待っている。


「それにしても、総合優勝まで奪われたかと思うと、なお悔しいわ」

「生徒会長がいるクラスだからな。いいところを見せようと、気合いの入り方が違うんだ」

「その上運動部も多いなんて、反則じゃない?」

「テストも上位に食い込むぞ」

「とっても素敵ね、その会長」


 結局、ドッヂボールの優勝も総合優勝も一組のものだった。

 成績優秀で運動神経抜群、眉目秀麗の三拍子が揃った生徒会長さま。
 お淑やかだがやる時はやる人で、男女学年問わず大人気。

 親衛隊なんて結成されるほどの、完璧なカリスマ生徒会長だとか。

 いつかお昼に聞いた話を思い出し、唐突に隣の男子を見た。

 大人気とはまるで正反対な球技大会。
 いじめられているのか、と勘ぐってしまうほど目の敵にされていた隣人。

 一体、何があったのだろう。
 何度も聞いてみようと思った。

 でも切り出すことができず、機会はだんだん減っていった。

 お昼を一緒に食べようと、クラスメイトに誘われ教室で食べるようになった。
 他クラスの生徒もやってくるから断りづらい。

 顔見知りまでできてしまったくらいだ。


「貴方たち、お昼はまた屋上?」


 教室で食べている姿を、あまり見たことがない。

 隣人に限っては教室にいたことがなかった。
 しかし、今日は土砂降りと言うに相応しい、バケツをひっくり返したような雨天。

 まるであの日のようだ。


「図書室でも使うか」

「飲食禁止じゃないの?」

「準備室なら大丈夫。先生は顔見知りだ」


 教室で食べるつもりはない、そう言っているように聞こえた。


「そういう久坂は、また教室か」


 また、を強調して言う。
 明らかにこの状況を楽しんでいやがる。

 彼はあたしが、猫を被り続けていることを、知っているのだ。