てとてとてと

 腰を低く落とし、最後まで徹底交戦の意志を掲示する久坂。

 無理とか、言っている場合ではないな。

 審判にタイムをかけようとした、その時だった。


「ようみんな、戦況はどうだ?」


 保健室に行っていた、弘瀬が帰ってきた。


「審判、タイムだ!」


 これで勝ちの目が出てきた。

 片手を上げて、内野へ戻る宣言をする。

 チームメイトはただ一人の女子。

 勝負が決するにはまだ早い。


「いまさら登場?」

「なに、勝負はこれからさ」



 結果から言えば、あたしたちは負けてしまった。

 勝負はこれからだと言った、大将が立てた作戦は悪いものではなかった。

 内野が投げたボールを捕って、外野にいる槇原に当ててもらう作戦だ。

 彼のボールの凄まじさは証明済みで、なんとか回せれば敵を減らせるだろう。

 そう簡単にうまくいくのかと、あたしは馬鹿にしていた。

 しかし敵の内野は、親の仇といわんばかりに大将を狙った。

 一度、二度、三度、あまりのしつこさに傍観してしまいそうになり、キャッチしたボールは外野へ回る。

 槇原の豪速球は、内野を一人削った。

 残った一人も、ボールを手にするなり外野に回さず大将を狙いだした。

 作戦通りの展開だった。

 狙われる相手がわかっているのだから、捕りこぼしがないようにサポートし、ついに外野にボールが渡った。

 これで勝ちだと誰もが思ったが、なんとボールが避けられてしまった。

 斜めに敵の内野へ飛んでいくボール。
 その先には、敵の大将がいた。


「もらった!!」


 体格に似合った大声で、誰にも捕れない剛球をさらなる勢いで、投げた。

 狙いは、やはり大将だった。

 あたしの前にいた大将は、
 避けようとしなかった。


 顔面狙いのボールを捕ろうとして、失敗した。


 勢いに負けて、顔にボールを受け、バランスを崩して頭から転んだ。