てとてとてと

 ――バシン!


「いたっ……」


 パスと見せ掛け、内野に注意を向けていた女子が当てられた。

 まずい、これで六対七だ。


「なかなかの策士だな」


 浅川が笑っている。

 余裕の笑みが焦りから生まれた苦笑か、あたしには判断できなかった。

 ボールは、さらに相手外野へ。

 同じ戦法は使わないのか、受け取った外野はすぐにボールを投げた。


「ワンサイドゲームなんて、これ以上許してたまるか!」


 今度のボールはパスだった。

 最短距離で繰り出された低めのボールを、すくい上げるようにキャッチした。


「ナイスだ!」

「さすが絵理香!」


 味方からの声援が上がる。

 まだまだこんなものでは、終わらせない。

 低く構えて、きっちり二歩目でサイドスローからボールを投げた。

 外野に向かっていくが、僅かに左に曲がる。


「うっそ?!」


 外れると思っていた前田にボールは当たる。

 外野の傍だから、さらにこっちボールだ。


「変化球とは、やるな」

「野球のボールじゃないんだよ?」


 責めるような口調だが、みんな喜びが言葉の端々で滲んでいた。

 これで人数は同数。

 簡単に終わってたまるものですか。


「補習免除は、あたしらのものだあ!」


 外野から受け取ったパスを、すぐに構えてオーバースロー。

 負けるなんて、あたしの性に合わないんだ。