てとてとてと

「おいおい、またかよ」

「だがこれで二回だ。あと一回で故意パスは終わりだ」


 不機嫌さを隠さない槇原と浅川。

 茉莉ほどではないけれど、彼らも頭に来ている。

 問題があるとすれば、その大将だ。

 あんなわざとらしく攻撃されるなんて、一体何をしたのだろう。

 ほら、パスだ。と無邪気にボールを渡す。

 雨の日に会ったあの男からは、想像がつかなかった。


「来たよ! くらえ必殺ダッシュ投げ!」

「反則キャリング、一組ボール」

「だから、なんで?!」

「そこの暴力的ワンコ!
 ボール持ったまま三歩以上走るな!」


 またも反則。
 これで三回連続なんですけど。

 あちゃあ、と頭を抑える大将。
 あたしも同じ気分だった。

 ボールを受け取ったのは、柔道部主将の深沢。

 どうせ外野に投げるだろう、とみんな油断していた。

 ブン! と低く唸ってぶつかるボール。

 当てられたのは、内野の男子だった。


「外野狙いじゃないのかよっ」

「ドッヂボールは内野を減らすゲームだろう?」


 やられた。

 外野ばかり連続で狙われたから、次も同じ狙いだろうと油断していた。

 当てられた男子を、気にするなと励ます大将。

 これは思ったよりもいやな展開になってきた。

 あと一回しか外野を狙えないとはいえ、それでも一回は投げられるのだ。

 誰が狙われるのか、わからないのは変わらないけど。

 内野と外野、両方に必要以上の緊張を与えられてしまった。

 しかも、当たったボールは敵の外野へ。
 完全に向こうの流れだった。


「パスを回せ!」


 わざとらしく、自分に回せと声を張り上げる深沢。

 確かに、彼のボールは簡単に捕れるものじゃない。

 と、少しでも思ったのが悪かった。