てとてとてと

 ――バシン!


 顔狙いかと間違いそうになる高さで、相手の男子に迫るボール。

 避けようとして、誤って肩に受けてしまう。


「もう一人いってみようか」


 再び外野に回ってきたボールで当てた大将が、機嫌よく宣言した。

 当たったボールは、自陣に転がっていた。

 流石に捕れないと判断したのか、敵は一斉に奥へ下がっていく。

 ボールを捕ったのは浅川だ。


「さて、誰に当てるか」


 余裕を持って相手を吟味する。
 だが。


「貸して! あたしが投げる!」


 ボールをかっ攫っていく茉莉。

 あーあ、と呆れ顔。
 うん、あたしも同じだ。


「反則ダブル内野パス、一組ボール」

「ええ、なんで?!」

「そこの血に飢えたワン公!
 内野同士、外野同士のパスは禁止だ!」


 外野から声を張り上げて注意する大将。

 保護者を切り外したのはまずかったかしら。

 また一組ボール。
 元外野が一人いるから、人数は八対七だ。

 ボールを手にしたのは、深沢とかいう主将の傍にいた、西川。


「全力で行け、西川!」

「任せとけ!」


 そう言って投げたボールは、また外野へ。

 距離があっても誤魔化されない、間違いなく顔面を狙った。

 この場にいる男子なら、槇原以外では避けられない不意打ちを、大将はまたしても防いだ。

 顔狙いは捕球が難しく、下手に弾いては相手陣地に転がってしまうのだが。


 ――バシン!


 殴り飛ばす勢いで打ち上げる。

 浮かせて勢いをなくしてからキャッチした。