てとてとてと

「これより決勝戦を開始する。
 両チーム、礼!」


 強面の体育教師がボールを抱え、審判として立ち合う。

 三度の飯より運動が好きな先生で、競技において平等に審判してくれるだろうが。

 何せ大将だ、過度な期待はすまい。


『よろしくお願いします!』


 やけに殺気のこもった礼をして、陣地で作戦会議を開く。


「相手の大将は深沢だな」

「柔道部の主将じゃねえか」


 腕が鳴るぜ、と血に飢えた野獣のように目を輝かせる弘瀬。

 球技だとわかっているのだろうか。


「ちなみに副隊長だよね?」

「隊長はハンドボールだ。よかったな吾妻」


 激しく余計なお世話だ。

 しかも隊長も副会長も怖いが、ある意味一番相手をしたくない人物がいなくてほっとしている。


「ほらほら、そんなことより作戦よ!」


 すっかりリーダー風を吹かせている久坂。
 頼もしいことこの上ない。


「まあ、妥当なところで大将は外野だろう」


 人数が多いとはいえ、大将を序盤から入れておくのは危険だ。

 勝負は外野が増える中盤以降。

 だができるなら入りたくない。ことこのクラス相手には。


「こーへいが外野なら、あたしも行こうか?」

「いいえ桐沢さん。外野は一人で十分」


 それは大将含めて一人、という意味か。

 過激な転校生は全力投球かつ、弾数は最大限で攻めようと言った。

 相手は強豪だ。
 元外野を増やして内野を削られては目も当てられないが。


「当てられたらこちらのボールにする可能性が上がる。
 機会は多いほうがいいでしょう?」


 本気の目だった。

 おとりは多ければいい、といっていた。