てとてとてと

「次の試合で勝てば優勝よ!」

「補習脱出は夢じゃないね」


 ちなみに、他の班は決勝準決勝止まりで、残っているのは自分達だけになる。

 他クラスの上位はバラバラなので、ここで勝利すれば全体優勝の可能性がまだ残っている。

 否が応にも気合いが入るチームメイト。
 だが、対照的にテンションが低くなる。


「……弘瀬。俺見学でいい?」


 駄目で元々、聞いてみた。

 すると予想外な獅子が吠えた。


「何言ってるのよ、あんたは主力なんだから死んでも出なさい!」


 があ、と吠えた久坂。
 虎の威を借りて頷く仲間たち。

 ちなみに猫の皮は随分前に脱ぎ捨てていた。

 鼠も犬も引っ掻き倒さんばかりの勢いだ。


「消極的だな同士よ。戦って前のめりに死のうではないか」


 縁起でもない。
 その上冗談にならない。

 対戦相手は、彩音が所属するクラスなのだから。


「いやあ、やっぱり凄いねえ」


 口調はおどけているが、目が笑っていない。

 茉莉は明確な敵意を持って、相手チームを睨んでいた。


「はじめから外野に行けば?」


 あの千草にまで気を遣われた。

 しかしあくまで戦え、という当たりさすがだ。
 戦力を逃がす気はない、というわけか。


「ならあんたが大将でいいから、とにかく参加しなさい!」


 何がなら、なのか意味がわからない。
 退路がない、という意味はよくわかったが。

 春季球技大会ドッヂボール編。
 ルールは少々変則的だ。

 まず、元外野は何人いてもいいが、外野にいる人間は、内野を当てても陣内には戻れない。どちらかがゼロになるまで戦う仕様だ。

 特例として、大将のタスキをかけた選手は外野と内野を自由に行き来できる。

 ただ、文字通り大将なので当てられてしまえば負けである。

 内野がゼロになったときに大将が外野にいた場合、やはり負けになる。

 ちなみに顔面狙いは大将のみ適応される、おっかないルールがあった。

 そして、大将のタスキを渡される自分。

 両選手が出揃い会場、もとい一部の男子のテンションが際限なく高まっていく。