てとてとてと

「弘瀬くんは強力なアタッカーだからね、午後は頑張ってもらわないと」

「任せろ。みんなまとめて村祭りにあげてやるぜ」


 ニヒルに笑って決める。
 だが、村祭りではなく血祭りだ。

 突っ込まない優しさもある。

 球技大会に向けてテンション高くする仲間から、少し離れた。


「よく必死になれるわね」


 自分から注目が逸れたからか、久坂の皮がべろりと剥げる。


「たかが球技大会でしょ?」

「一応体育の評価科目だ」


 真面目に受けていれば不要だ、と久坂は一笑した。

 そういえば転校生だったな。

 事情を知っていれば、笑ってなどいられない。


「総合で最下位のクラスは、補習確定になるんだ」

「なっ……?!」

「逆に一位は補習免除。クラス総合で最下位でも、種目で一位なら無しになる」


 ぶん、と唸る久坂の二の腕。

 叩かれる、と身構えたのだが、予想と勢いに反して小さくガッツポーズしていた。


「絶対勝つわよ!」


 彼女にも火が点いたようだ。

 そうして始まった春季球技大会。

 一回戦の相手は二年生だが、みんな運動部で構成された強者だった。

 二回戦、三回戦、続く試合で必ず運動部の猛者がいた。

 堅実な球技なだけに、勝利を手にしようと他クラスも必死なのだ。

 対する我がチームに、運動部は一人もいない。

 皆他の球技で狩りに行ったのだ。

 弘瀬と担任の読みが当たったといわざるをえない。

 補習を回避するため、二年のクラスは戦力を分散さする。

 何故なら、戦力を集中する一年ではたいてい惨敗するからだ。

 同じ過ちを犯さず、堅実に上位に入る作戦。

 だがそれさえもミステイク。
 本当に優勝を目指すクラスには、太刀打ちできないだろう。

 実は優勝に最も近い策は、戦力集中なのだ。

 一年は体が出来上がっていないため、同じ作戦でも三年生に負けてしまう。

 そう、本当の勝負は三年生になってから。

 二年までは運で勝しかない。