てとてとてと

「あのう……」


 異様なテンションの一同についていけないのか、怖ず怖ずと手を挙げる久坂。


「これから何かあるの?」


 ああ。
 彼女は転校してきたから知らないのか。

 この学校の伝統を。

 といっても他校より変わったことが多い、程度の伝統なのだが。


「俺たちの学校は六月末に中間考査があるんだが」


 ふーん。とさして興味もなさそうな態度。

 あからさまに、あんたには聞いてないわと物語っている。

 しかし、説明を始めたからには止めるわけにもいくまい。

 中間考査は六月末、ついでに期末考査は夏休み三日前から、終わり次第夏休みとなる。

 半月も経たず期末考査を受けては生徒にストレスが溜まる、と何代か前の生徒会長が一計を案じた。

 その結果が六月上旬に行われるレクリエーション、春季球技大会だ。

 秋の体育祭に向けての前哨戦、一年生は五月の遠足を終え、より親睦を深めらるなど。

 様々な理由があるが、要するに勉強ばかりでつまらないから体を動かそう、というわけだ。

 球技大会はクラスを四チームに割り、四つの球技を全学年がぶつかり合い頂点を決める流れになっている。


「なら、私はどこに入るのかな」

「弘瀬、どこだ?」


 説明しておいて無責任な、と非難に満ちた眼差しが突き刺さる。

 だが怒るなら説明もしない我が担任にしてほしい。


「ドッヂボールだな。俺たちと同じだ」


 そう、ここにいる全員はドッヂボール班なのだ。

 ちなみに、あと男子二人と女子二人が同じ班だ。

 残りの球技が部活動の有利をなくすため、ハンドボールとラクロスとボーリングとなっている。

 いくら平等とはいえ、ハンドボール以外はどうなのだろう。


「よくドッヂボールの枠が残っていたよね」

「ありきたりな球技はいやだ、と息巻く奴が多かったからな」


 だからと言って、ラクロスとボーリングがすぐに定員になるのは、如何なものか。

 ルールをわかっているのか不安である。