てとてとてと

 千草が手に入れた戦利品を男三人で分けると、女子たちは可愛らしい包みを開いて小さな弁当を取り出した。

 ちなみにまだ誰一人てして食べていない。

 食事はみんな揃ってから。

 逆らうと幼なじみが怖いのだ。


「それじゃあ、いただきます!」


 茉莉の音頭にあわせて、一斉にいただきますの声が上がる。

 もはや待ちきれんと、次々パンを口に運ぶ千草。

 彼は不思議そうに女子を見た。


「お前らそれだけで足りるのか?」


 女子に言っているのか自分達に言っているのか。

 おそらく両方だろう。

 そんな彼はメロンパンほどある特大カレーパンを四つと、アンパン三つを購入していた。


「あいにく俺は小食でな」


 右に同じく。

 俺たちはサンドウィッチが二つと同じくアンパンを一つ。


「弘瀬君は食べ過ぎだよ」

「桐沢は食わなさすぎなんだよ」

「だから背が伸びないんだよ」

「言っちゃいけないこと言ったなあ!」

「待て、今のは俺じゃねえ?!」


 絶妙なタイミングで打たれた弘瀬の奸計にはめられ、千草に噛み付く茉莉の図。

 実にいつも通りだが、最近はここに呆れが入る。


「遊んでいると、お昼休みがなくなりますよ?」


 冷静な久坂の指摘に、渋々下がる茉莉。

 千草をダウンさせておいて、まだ不満なのか。

 女子にスタイルは禁句だ、改めて認識しさせられた。


「あまりいじめてやるな、桐沢」

「わかってるよう。大事な戦力だものね」


 にしし、と笑う二人。

 普段は弘瀬の暴走を止める茉莉だが、今日に限っては期待できそうにない。

 ちなみに千草は、既に復活して最後の特大カレーパンを完食していた。
 恐るべき回復力だ。