「……いらない、ですって?」
空気は冷たいはずなのに、久坂の言葉はやけに熱かった。
キッと挑むように睨み付けられると。
「……誰が、あんたにお礼なんか言うか!」
と吠えられた。
そりゃあもう、景気よく盛大に。
「お節介焼いて正義のヒーロー気取りか!
あたし一人でどうにかできたわ、あんなへっぴり腰ども!」
プライドに触った、ということだろうか。
余計なことをされて大変おかんむりらしい。
なるほど。
クラスに来て、隣に座る相手が自分だと知って、あの時皮が剥がれかけたのか。
「わかった? あたしは文句を言いたかったの。
断じてお礼なんかじゃないんだからね!」
そう言って、久坂は大股歩きで屋上から出ていった。
しかしいくら何でもここまで怒るだろうか。
よほど欝憤が溜まっていたんだろう、と思った。
◇
久坂絵理香がクラスの一員になってから、はや数日が経った。
その間の猫被り、いや、彼女の人気は凄まじかった。
落ちることを知らず鰻登りで、初日に見せた豪気がまるで嘘のようだった。
しかしあれは紛れもない現実だ。
未だ教科書がないという理由で席をくっつけるのだが。
「あんまり寄らないでよね?」
男子生徒を魅了する笑顔を、毒に塗れた刺で牽制される。随分嫌われたものだ。
普段から授業は睡眠学習が多いので、隣のプレッシャーは気にならないのだが。
「ちょっと、寝てんじゃないわよ?!」
小声でペンを突き立てられる。
うとうとしているところを、大声を出さない程度に加減して突き立てられる。
久坂が転校して、授業風景は少しだけ変化していた。
授業に関しては、少しだ。
空気は冷たいはずなのに、久坂の言葉はやけに熱かった。
キッと挑むように睨み付けられると。
「……誰が、あんたにお礼なんか言うか!」
と吠えられた。
そりゃあもう、景気よく盛大に。
「お節介焼いて正義のヒーロー気取りか!
あたし一人でどうにかできたわ、あんなへっぴり腰ども!」
プライドに触った、ということだろうか。
余計なことをされて大変おかんむりらしい。
なるほど。
クラスに来て、隣に座る相手が自分だと知って、あの時皮が剥がれかけたのか。
「わかった? あたしは文句を言いたかったの。
断じてお礼なんかじゃないんだからね!」
そう言って、久坂は大股歩きで屋上から出ていった。
しかしいくら何でもここまで怒るだろうか。
よほど欝憤が溜まっていたんだろう、と思った。
◇
久坂絵理香がクラスの一員になってから、はや数日が経った。
その間の猫被り、いや、彼女の人気は凄まじかった。
落ちることを知らず鰻登りで、初日に見せた豪気がまるで嘘のようだった。
しかしあれは紛れもない現実だ。
未だ教科書がないという理由で席をくっつけるのだが。
「あんまり寄らないでよね?」
男子生徒を魅了する笑顔を、毒に塗れた刺で牽制される。随分嫌われたものだ。
普段から授業は睡眠学習が多いので、隣のプレッシャーは気にならないのだが。
「ちょっと、寝てんじゃないわよ?!」
小声でペンを突き立てられる。
うとうとしているところを、大声を出さない程度に加減して突き立てられる。
久坂が転校して、授業風景は少しだけ変化していた。
授業に関しては、少しだ。


