てとてとてと

「鍵が掛かってますよ?」


 屋上は常時解放禁止だ。

 一昔前に起きた事故と授業をさぼる生徒が多い、という理由で鍵を掛けられている。

 そのため、屋上に出るには教師の許可が必要なのだが。


「こっちから入れるよ」


 屋上脇の窓を叩いた。

 当然左右に動くわけはなく、なに馬鹿なことをいっているんだ、という顔で見られる。

 しかし取り出したる魔法のマイナスドライバー。

 これを使えば簡単に開くのだ。


 ――ガチャン!


「…………うそ」

「枠が弛んでいるらしくてね、ちょっといじれば外れるんだよ」


 情報源は言うまでもない。

 外した窓を屋上に放り出して、一足先に外へ出た。

 当たり前だが貸し切りだった。

 清掃は他クラスが行っているのだが、そんなに汚れていなかった。

 昼食運搬係りとお客さんを招き入れるために、これまた魔法の針金で鍵穴に魔法を掛ける。


「はい。いらっしゃい」

「……今何やった?」

「魔法を使いました」


 ここしか開けられないし、開けたら鍵を掛けなきゃならないし、窓開けより時間が掛かるためやりたくはないのだが。

 スカートの女の子に、窓を跨げというのは酷だろう。


「これって校則違反なんじゃあ」

「申請すれば開けてもらえるから、今千草が既成事実を作っている」

「立証できない犯罪は犯罪じゃないってわけね」

「ところで、そっちが本心?」


 クラスにいた時の、淑やかで敬語を使い、大人しい物腰の久坂はいなかった。

 ちょっと偉そうで、態度が大きく、挑むような姿勢で強気な久坂だ。


「別に、あんたに隠しても意味がないじゃない。始めからわかっているんだし」


 はて。
 わかっている、とはなんのことだ。

 確かにどこかで見覚えがあるが。

 こんな美人とどこで出会っただろうか。