制服に付いた埃を払い、謎のネタ帳と呼んでいる手帳でハイエナ群がる教卓を指す弘瀬。
「お前たちは参加しないのか」
「何の争いかもわからずにか?」
それはそうだ。
昼の時間なら、支給されて余った牛乳の取り合いなど簡単に答えが出るのだが。
ああそんなことか、と弘瀬は笑い。
「席替えだ」
なんて、よくわからないことを言った。
「席替えって、この前やっただろうが」
暦は六月に入っていた。
新しい学年ということで、始めの一月は五十音順だった。
五月にはクラス単位のレクリエーションを行い、親睦が深まったということで半ば過ぎに席替えをした。
まだ半月も経っていないのだが。
「先生が許可してくれないだろう?」
「許可は得た」
なぜに許された。
「先生のお墨付きでな、ジャンケンに勝った者から順に好きな席を指定できるのだ」
「てことは、まさか俺が前に座れることも許されるのかっ?」
千草は身長の高さゆえ、一度も前に座ったことがない。
希望に満ちた顔で弘瀬を見ると。
「無論だ」
後光が射さんばかりの勢いで、胡散臭い笑みを浮かべた。
「こうしちゃいられねえ! 俺は今、戦士になる!」
最下位から順にごぼう抜きして上位の輪に加わるらしい。
男気溢れる選択に、ハンカチを振って見送った。
そんな自分を、ほうと感心したのか呆れたのかよくわからない声を上げる。
「お前は参加しないのか?」
「そもそも何で席替えなんてやる必要があるんだ」
いくら目的がわかっても、動機がわからなければ参加するつもりはない。
ただの席替えであるはずがない、なぜなら弘瀬が関わっているからだ。
「慧眼だな」
降参だ、と肩を竦める。
とても胡散臭い。
俺が参加しないことすら考えの内なのでは。
「お前たちは参加しないのか」
「何の争いかもわからずにか?」
それはそうだ。
昼の時間なら、支給されて余った牛乳の取り合いなど簡単に答えが出るのだが。
ああそんなことか、と弘瀬は笑い。
「席替えだ」
なんて、よくわからないことを言った。
「席替えって、この前やっただろうが」
暦は六月に入っていた。
新しい学年ということで、始めの一月は五十音順だった。
五月にはクラス単位のレクリエーションを行い、親睦が深まったということで半ば過ぎに席替えをした。
まだ半月も経っていないのだが。
「先生が許可してくれないだろう?」
「許可は得た」
なぜに許された。
「先生のお墨付きでな、ジャンケンに勝った者から順に好きな席を指定できるのだ」
「てことは、まさか俺が前に座れることも許されるのかっ?」
千草は身長の高さゆえ、一度も前に座ったことがない。
希望に満ちた顔で弘瀬を見ると。
「無論だ」
後光が射さんばかりの勢いで、胡散臭い笑みを浮かべた。
「こうしちゃいられねえ! 俺は今、戦士になる!」
最下位から順にごぼう抜きして上位の輪に加わるらしい。
男気溢れる選択に、ハンカチを振って見送った。
そんな自分を、ほうと感心したのか呆れたのかよくわからない声を上げる。
「お前は参加しないのか?」
「そもそも何で席替えなんてやる必要があるんだ」
いくら目的がわかっても、動機がわからなければ参加するつもりはない。
ただの席替えであるはずがない、なぜなら弘瀬が関わっているからだ。
「慧眼だな」
降参だ、と肩を竦める。
とても胡散臭い。
俺が参加しないことすら考えの内なのでは。


