それは7月某日、今日は帰ったらロロナのアトリエでもやろうかと思ってたのどかな昼下り、だがそれは儚き夢じゃなかったのかと思いたくなることになった。
バタム―!
勢いよくドアが開きそこから腰まで届きそうな栗色の長い髪をした端正な顔立ちの女子大生が入ってきた。藤林杏香先輩だ。
「大樹、麗子に今すぐこの部屋に来るよう言って。2年と成門には私が言うから。」
―?あまりにも急で何がなんだかわかんないけど取りあえずそうした。
しばらくして、杏香先輩がオレに吉田に電話かけろと言ったからしたんだがすぐさまオレのケータイを取って、
「あ、大心?今すぐ演劇クラブの部屋(この部屋)まで来なさい。3分以内に来なさい。ついでに私にジャムパンも買ってきなさい。」



そして、
「ギリ3分!ギリ間に合った~。」
息を切らして吉田が入って来たのだが手ぶらだった。
「ジャムパン買って来いって言ったでしょうがっ!役立たずの後輩めっ!!」
そう言うや杏香先輩の鉄拳が吉田を襲った。そして
「どうしてジャムパン買って来なかった訳!?この役立たず!細目!地雷原で砂遊びしてろ!!」
なんて痛烈な罵倒三昧。
吉田のヤツたまに漆田(後輩)にエラソーにしてるくせに杏香先輩には逆らえないでいる。てゆーか3年や4年の先輩ですら2年の杏香先輩には逆らえないんだから仕方ないかな。
「でよぉ杏香さん。この時間に俺達を呼んだのはなんか理由がありそうだなぁ。」
そう霧蔵先輩が髪をかき上げながら三木眞一郎ばりのカッコいい声で杏香先輩に確認した。
「そうだった。私たち演劇クラブ1、2年はウチのサッカークラブとサッカーの試合することになったわ。で、ポジション分けのために呼んだのよ。」
ちょっとまて。ウチのサッカークラブはライデンイレブンの異名を持つ強豪だぞ?何でそことウチがわざわざ練習試合組まにゃならんのですか!?