「聖なる杖よ。我の願いのままに姿を変えよ。太陽のように暗闇を照らせ――光[ライト]!」
杖の先端である月の形をした物が眩しい光のように輝きを放った。
エセルは杖を前に突き出し、周りがよく見えるように向けたが見える範囲が四メートル程なったぐらいだった。
「霧が邪魔をして光が鈍くしか光らない。光[ライト]でもだめだなんて!」
ライトの光の輝きはその魔導士の魔力の強さとも言われている。
自分の実力はこれぐらいなのか。
エセルが悔しそうに呟いた。
そんなエセルを見てそれをなだめるかなようにフェリアが優しく言う。
「でも最初よりはずいぶん見えるようになったわ。ありがとう、エセル」
その言葉にエセルは下を向いて首を横に振った。
私の魔力がもっと高ければもっと輝けるようになるのに。
エセルは自分の不甲斐なさに腹が立った。
そんなエセルを見て、フェリアは状況を察すると少し慌てた様子で口を開いた。
「とにかく先を急ぎましょう。これで見える範囲が広がるからだいぶ楽になるわ」
レオルがうなづいた。
そして三人はゆっくりと歩き始めた。